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トロントの風景
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暮らしてみた エスニック トロントガイド

ケンジントンマーケットは、トロントでいちばんマルチカルチャーなネイバーフッド。マーケットといっても青空市場でもなく、大きな建物にたくさんの店が入っているわけでもない。様々な専門店が軒を連ねる一角で、チェーン店スーパーやショッピングモールとはまた一味違った買物ができる。

スパイス専門店、ベイカリー、タマゴ屋、チーズマーケット、魚屋、オーガニック食品、豆・雑穀・ドライフルーツの量り売り、南国のフルーツマーケット、また、ビンテージファッションや古着、雑貨屋、ラテン系食材店にサッカー応援グッズ店などがある。

店の看板やディスプレイがアーティスティックで賑やかなら、集まる人々もカラフル。髪や肌の色、ファッションしかり、年齢層も幅広く、いろいろな社会的アイデンティティの人がストリートを行きかう。年輩の主婦たち、子連れの若いお母さん、大学生、アーティスト、カウンターカルチャー系・・・。コーヒー屋の外に置かれたベンチに、日長座って通りを眺める中国系のおじいさんや、観光客、パンクキッズ、ラスタマンが、お互い気も使わず同席している光景は微笑ましい。


カフェから通りを眺める People Watching



そんな道行く人々を眺めるのにちょうどいいカフェがいくつかある。私は、Augusta Ave とBaldwin St の角にある、カフェ Coreanaが好きだ。バラックにペンキを塗って壁に絵を描いたようなオフビートな建物の窓沿いにカウンター席があり、夏は窓をぜんぶはずして外側からも座れるようになっている。

コーヒー専門店なのにお茶も充実しているのがムーンビーン(Moonbean  30 St. Andrew)、そして、コーヒーの味はともかく零下の冬でもゆっくり座ってピープルウォッチングをしたい時は、人通りの多い道に面しているKENSINGTONS(Baldwin StとKensington Ave)がベストスポットだ。道路に面した壁が全部ガラス張りで写真のシャッターチャンスがいっぱい。コーヒーの味で選ぶなら、アイディールコーヒー(I Deal Coffee 84 Nassau St.)に行く。

ケンジントンはカウンターカルチャー系のホームでもあり、アナーキストやトロツキー主義者の溜まり場となっているコーヒー屋や本屋、また、トロントに最初にできたカナビスカフェもある(処方箋がない人が吸引するのは違法のはずだが・・・)。


サボテン食べた? ケンジントン名物 アステカ料理 マヤ料理



ケンジントンマーケットは、メキシカンフードがおいしい。サボテンとチーズを焼いたのが入ったタコスや、コチニータという豚肉のマヤ料理、辛いピーマンにケソチーズを詰めて揚げたレレノスなどは、少しクセがあるがやみつきになる。以前はほかの中南米系のテイクアウトもあったが、最近、特にオウガスタ・アヴェニューは、7割以上がメキシコ系となった。エンパナダスというミートパイのようなチリ料理を出すレストランJumbo Empanadas(245 Augusta Ave.)は健在だが、かつてあったエルサルバドルやガテマラ系のテイクアウトは、もう見当たらない。ただ、食材は今でもいろいろ揃う。


オーガニックの 醤油風味たまりアーモンド



このところケンジントンにもオーガニック食品店やベジタリアン向けの店が増えた。私はベジタリアンではないが、量り売りのTamari Almondやチェリージュースが目当てで立ち寄る。タマリアーモンドは、北米でオーガニック派に人気の、たまり醤油を表面に塗ってローストしたアーモンド。ポテトチップよりも健康でちょっと和風なスナックだ。



ケンジントンの タマゴ売り♪



オウガスタ 通りにある、いまどき珍しい”タマゴ屋”、オウガスタ エッグ マーケット(Augusta Egg Market 251 Augusta Ave 日曜休み)は、小さな店だがマーケットの老舗。終戦後、道端で生きた鶏と生みたてタマゴを売っていた頃から続いているそうだ。

農場直送で新鮮な卵が手に入る。ピーウィー(Pee Wee)サイズという一番小さい鶏卵からはじまって様々なサイズの卵が並ぶ。オーガニック卵、黄身二つ入り卵(Double-yolk eggs)のパック、七面鳥の卵、うずらの卵などがある。ダブル黄身の卵は濃くてリッチなオムレツができるし、ゆで卵にして半分に切りサラダの上にのせたらるとなんだかヘンテコだが子供が喜ぶ。

ベイカリーやケーキ屋がよく使う、殺菌処理済み液卵(pasteurized liquid eggs)の全卵タイプと卵白タイプもある。卵白だけの液卵はコレステロール要注意の人や、ボディービルダーご用達。黄身なしスクランブルエッグやスパニッシュオムレツはトロント市内のホテルのレストランでも時々見かける。

タマゴといえば、オーガニックフードストアの4 Life Natural Foods (257 Augusta Ave)は、メノナイトが作る卵を仕入れて話題になっている。



Festival フェスティバル



5月から10月にかけての毎月最終日曜日は、ケンジントンマーケットが歩行者天国となる。音楽やダンスパフォーマンス、食べものブース(屋台)が出て盛上る。
冬は、例年冬至の夜に行われる「光のフェスティバル」が一見の価値あり。カーニバルとスピリチュアルな儀式を併せた興味深いお祭りだ。おもしろい写真が撮りたい人にもお勧め。



ケンジントンマーケット えすにっく史



19世紀終わりごろは、スコットランドやアイルランドからカナダに到着して間もない貧しい移民の集中する地区だった。その頃の面影を残す質素ながらビクトリア調の外装の家が、いまだに姿をとどめていて、Wales Avenueなど味のある街並みになっている。その頃から、オープンマーケットや蚤の市が開かれはじめた。

1920年代に入いると、ユダヤ人移民が増え、小さな雑貨屋、八百屋、ベイカリー、洋服屋などが次々とオープンし、その頃からジューイッシュマーケットとして知られるようになる。ケンジントンマーケット周辺には、約6万人ぐらいのユダヤ人が住んでいたそうだ。東欧出身のユダヤ人が多く、後にイタリア系も集まりはじめ、テイラーや毛皮ビジネスがケンジントンマーケットからクィーンストリートにかけて広がっていった。

50年代には、現在のケンジントン商店街の西側あたりにポルトガル アゾレス諸島からの移住者がどっとやってきた。続いてカリブの島々、香港からの移民ラッシュがあり、隣接するチャイナタウンも活気づいてくる。80年代から90年代になると、ケンジントン周辺の人口に、ソマリア、エチオピア、スーダン、ベトナム、イランからの移住者が加わった。マーケット周辺のアパート・貸し部屋は、アーティストやライター、ヒッピー世代の大学教授や院生の間で人気だ。

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